透析部門

腎臓リハビリテーション

腎臓リハビリテーションとは

皆さまこんにちは。リハビリテーション室、理学療法士(腎臓リハビリテーション指導士)です。

最近、腎臓リハビリテーションとういう言葉が広がりつつありますが、お聞きになったことはありますでしょうか?

まず、腎臓リハビリテーションとは、「腎疾患や透析医療に基づく身体的・精神的影響を軽減させ、症状を調整し、生命予後を改善し、心理社会的ならびに職業的な状況を改善することを目的として、運動療法、食事療法と水分管理、薬物療法、教育、精神・心理的サポートなどを行う、長期にわたる包括的なプログラム」とされています。

簡単に説明させていただきますと、元気で豊かな生活を送れるよう、運動療法や食事、薬など多方面からサポートしていくことです。

少し話が変わりますが、新規透析導入患者様や透析患者様の平均年齢は、年々高齢化してきており、さまざまな合併症を有する重複障害である場合が多いです。
CKDや重複障害は、運動不足や死亡率上昇に影響を及ぼすことが知られています(1)
また、透析患者様の運動習慣の有無は、生命予後悪化(2)と関連していることが報告されています。
さらに、CKD・透析患者様の身体機能は低下しており(3、4)、身体機能の低下は、生命予後悪化と関連している(5、6)ことも報告されています。

運動制限から運動推奨への転換

腎臓リハビリテーション(運動療法)がCKD患者様に有益である可能性が高いにも関わらず、近年までCKD患者様に対する運動は制限されていたという背景があります。

その理由としましては、1990年代頃まで、透析導入原疾患の40%程度は糸球体腎炎が占めておりました。糸球体腎炎やネフローゼ症候群などにおいて、活動性の高い時期の運動は、腎血流量の減少や蛋白尿の増加を招くことから、運動制限が治療の一環とされてきました。

しかし、その後、運動時の蛋白尿の増加は一過性に認めるが、一時的であること(7)、腎機能への影響も認めないこと(8)が示されました。

これらの背景から、運動制限から運動推奨へと大きなパラダイムシフトを向かえました。

2018年には、世界で初めて、日本腎臓リハビリテーション学会から「腎臓リハビリテーションガイドライン」が発刊され、保存期、透析期において運動療法を提案、もしくは推奨すると明記されました。

現在はまだ議論されているところではございますが、運動療法による保存期CKDに対する腎保護効果により、腎代替療法へ移行延長が期待されています。
まだまだ、発展途上ではありますが、これからの盛り上がりに期待です。

筋力トレーニングとウォーキング

腎臓リハビリテーションにおける運動療法は、筋力トレーニングとウォーキングをどちらも組み合わせて行うことが推奨されています。
どちらもややきつい程度、話しながらでも行える程度の強度がおすすめです。

筋力トレーニング

1.膝の屈伸(スクワット)

つま先立ち(カーフレイズ)

脚上げ

ウォーキング

ウォーキングは、一日4000~6000歩程度を目標に行えると良いと思います。
こちらも強度は、筋力とレーニングと同様で、話しながらでも行える程度が推奨されています。
夏の時期は非常に暑いので、朝か夕方で脱水には気を付けて行えると良いですね。

当院では、腎臓リハビリテーション指導士の資格のあるリハビリスタッフが、運動指導や透析中の運動療法に携わっております。
運動に関しては、なんにでも相談は承りますので、もし興味のある方がいらっしゃいましたら、お近くのスタッフにお声がけいただけると幸いです。

参考

(1)Zelle DM, Klaassen G, van Adrichem E, Bakker SJ,Corpeleijn E, Navis G:Physical inactivity:a risk factor and target for intervention in renal care. NatRev Nephrol 2017 ; 13 : 152-168

(2)OʼHare AM, Tawney K, Bacchetti P, Johansen KL:Decreased survival among sedentary patients undergoing dialysis:results from the dialysis morbidity and mortality study wave ù. Am J Kidney Dis 2003;41:447-454

(3)Painter P : Physical functioning in end-stage renal disease patients:Update 2005. 2005;218-235

(4)Hiraki K, Yasuda T, et al.: Decreased Physical Function in Pre-Dialysis Patients With Chronic Kidney Disease. Clin Exp Nephrol. 2013; 17: 225-31.

(5)Roshanravan B, Robinson-Cohen C, Patel KV, Avers E, Littman AJ, de Boer IH, Ikizler TA, Himmelfarb J, Katzel LI, Kestenbaum B, Seliger S:Association between physical performance and all-cause mortality in CKD. J Am Soc Nephrol 2013;24:822-830

(6)Matuzawa R et al:Relationship between lower extremity muscle strength and all-cause mortality in Japanese patients undergoing dialysis. Phys Ther 2014;7:947-956

(7)Fuiano G, Mancuso D et al : Can young adult patients with proteinuric IgA nephropathy perform physical exercise? Am J Kidney Dis 2004 ; 44 : 257-263.

(8)Eidemak I, Haaber AB et Al : Exercise training and the progression of chronic renal failure. Nephron. 1997 ; 75 : 36-40.