腎不全の治療について

腎臓ってどんな臓器?

腎臓とは

「肝心(腎)要(かんじんかなめ)」という言葉があります。この語源は「肝臓」と「心(腎)臓」がとても大切な臓器であることに由来すると言われています。それほど大切な臓器ですが、一般的にあまり知られていないこともたくさんあります。ここでは健康状態を保つために、とても重要な働きをする腎臓について詳しくご説明します。

腎臓ってどんな臓器なの?

⇒尿をつくって余分なものを体の外に出してくれます

腎臓には血液をろ過して、体の中に溜まった老廃物や水分、取り過ぎた塩分などを尿と一緒に体の外へ出してくれる働きがあります。腎臓はいらなくなった余分なものを体から追い出して、必要なものだけをしっかり体の中に残してくれるので、体の中の環境を正常に保つことができるのです。

腎臓ってどのへんにあるの?

⇒腰の上あたりのお腹の後ろ側で、左右に1つずつあります

腎臓は腰の上の辺りのお腹の後ろ側あります。背骨を挟んで右と左に1つずつあって、形はソラマメに似ています。大きさは直径10センチ、幅5センチ、厚さは3センチくらいで、握りこぶしくらいの大きさです。大人の腎臓の重さは一つ120g~150gほどで、だいたいお茶碗のご飯1杯分が同じくらいの重さです。

腎臓ってどんな構造をしているの?

⇒血液をきれいにするために細い血管が集まった“ろ過装置”です

血液をろ過する働きがあるだけに、腎臓の構造はネフロンと呼ばれる特殊な構造が100万個も集まってできています。ネフロンは毛細血管と呼ばれる細い血管が球状に絡まった「糸球体」と、糸球体につながる「尿細管」という管でできています。心臓から送り出された血液はお腹の大動脈を通り、枝分かれして腎動脈に流れます。腎動脈を通った血液は腎臓に入って糸球体に流れ、老廃物を含んだ血液がろ過されます。この時に老廃物を含んだ液体が出ますが、この液体は「原尿」といって尿の素ができます。原尿は健康な人で1日あたり百数十リットルつくられます。できた原尿はその後、尿細管を通る間に体に必要な栄養やミネラル、水分などがもう一度吸収され、不要な物質は尿中に出されます。最終的には老廃物や余分な水分だけは尿となって体の外へ出されるのです。


ネフロン構造と機能(日本腎臓学会 腎不全治療選択とその実際 2014年版より作成)

腎臓にはどんな機能があるの?

⇒体内をお掃除して、体内の環境を最適にしてくれます

腎臓は老廃物や余分な水分、塩分などを尿として排泄することで、体の中の水分量やナトリウムやカリウムといったイオンバランスを適正に保ったり、血液の酸性、アルカリ性を調節したり、体内を常に最適な環境にする機能があります。また、骨を強くするビタミンDというホルモンを分泌させて、カルシウムやリンの吸収や排せつを調節し、骨を丈夫にしてくれたり、赤血球をつくるホルモン(エリスロポエチン)や血圧を調整するホルモン(レニン)などを分泌したりして、体の中の塩分や水分量を調節し、血圧をコントロールする働きもあります。体内に水分が不足すると、腎臓はなるべく体内の水分を減らさないように尿の量を減らし、体液量を適切に保つ働きをします。平均すると大人1人が1日当たり1.5リットルの尿を出していますが、水分の摂取量や汗をかいた量などに応じて、腎臓は細やかに調節してくれます。いつもよりトイレの回数が少ないのは、水分量が足りないという腎臓からのメッセージなのです。

腎臓の働き

  1. 老廃物や余分な水分をろ過して、排泄する
  2. 体内の水分量やイオンバランスを調節する
  3. 血圧を適正にコントロールする
  4. 造血ホルモンを分泌して赤血球をつくる
  5. ビタミンDを活性化させて、骨を丈夫にする

腎臓の機能が低下すると、どうなるの?

⇒腎臓はとても辛抱強く、末期腎不全になるまで悲鳴を上げない為に自覚症状が出にくい特徴があります

人が眠っている間も不眠不休で働いてくれる腎臓は実にさまざまな働きをしてくれています。しかし、機能が低下すると老廃物がうまく排泄できなくなったり、体に必要なたんぱく質まで尿と一緒に排泄してしまったりします。具体的な症状としては、手足がむくんだり、立ちくらみや貧血が起こりやすくなったり、カリウムが高くなったり、体が酸性になったり、骨がもろくなったり、疲労感が出るなど、体に不調が表れますが、自覚症状がない場合がほとんどです。
初期の段階では食事療法や薬などで治療ができますが、腎機能がさらに低下すると薬での治療では難しくなり、透析や腎移植といった腎代替治療が必要になります。高齢化に伴い、慢性腎臓病(CKD)を患う人も年々増加しています。腎機能が低下すると、心筋梗塞や脳卒中などの危険が増すと言われています。
自覚症状がないからといって安心するのではなく、健康診断や人間ドックを定期的に受けて、早期発見、早期治療につなげることが重要なのです。

腎機能が低下すると起きる主な症状

  1. 手足がむくむ
  2. 体が酸性になる
  3. カリウムが高くなる
  4. 貧血になる
  5. 血圧が上がる
  6. 骨がスカスカになる。